心理的安全性のつくりかた

TitleOutline
Author石井 遼介
Published2020/9
Read2021/8

一行まとめ

組織・チームに心理的安全性をつくるために、読者の一人ひとりが心理的柔軟なリーダーシップを育み、チームに関わるすべての人々が充実感と成果を出せるための本

要約

  1. 組織・チームに心理的安全性をもたらすのは役職に関わらず、リーダーシップを持って自分自身で行動することから始まる。つまり心理的安全性を高めるためのリーダーは自分自身なのだ。
  2. 日本にとっての心理的安全性は、何を言っても大丈夫という「話しやすさ」、困ったときはお互い様な「助け合い」、とりあえずやってみようという「挑戦」、異能、どんとこいという「新奇歓迎」の4つの因子で構成される
  3. 一人ひとりがどう行動を取るかの「行動・スキル」が変革の難易度が一番低く、自分が変わることで周りにも良い影響を与えやすい
  4. 「きっかけ → 行動 → みかえり」という行動分析のフレームワークを用いて、問題行動を分析し、言葉によって心理的安全性を高める

第1章 チームの心理的安全性

ハーバード大学教授のエイミー・C・エドモンドソンは、1999年「チームの心理的安全性」という概念を打ち立てた

心理的「非」安全なチーム

「チームのために良かれと思って行動しても、罰を受けるかもしれない」という不安やリスクのある職場

エイミー・C・エドモンドソン教授が整理した対人関係のリスクのカテゴリ

  1. 無知だと思われたくない: 必要なことでも質問しない、相談をしない
  2. 無能だと思われたくない: 水を隠す、自分の考えを言わない
  3. 邪魔だと思われたくない: 必要でも助けを求めない、不十分な仕事でも妥協する
  4. 否定的だと思われたくない: 是々非々で議論をしない、素直に意見を言わない

罰せられるのであれば行動しないほうがマシ。そうやって必要なことでもメンバーが行動しなくなってしまう。

日本版「チームの心理的安全性」の4つの因子

日本と米国では、文化や社会構造面による多様性の前提が異なる
オリジナル版は「無知・無能・邪魔・否定的」

  1. 話しやすさ「何を言っても大丈夫」
  2. 助け合い「困ったときはお互い様」
  3. 挑戦「とりあえずやってみよう」
  4. 新奇歓迎「異能、どんとこい」

変革の3段階

  • 変えやすい順だと
    • 「行動・スキル」一人ひとりがどう行動を取るか
    • 「関係性・カルチャー」チームとしての習慣・行動パターン
    • 「構造・関係」会社や事業の仕組み自体に寄与する構造・環境要因
  • 「これから自分のチームや組織に心理的安全性をもたらそう!」という 意思をもって行動しようとする時、役職や地位にかからわず、あなたは組織・チームに心理的安全性をもたらすリーダー
  • 誰か他人のせいにしていても、社員や役員が「変わってくれる」のを祈っていても、組織・チームは変わっていかない

第2章 リーダーシップとしての心理的柔軟性

個々のチーム、メンバーに合わせて、しなやかにチームを変えていくことのできる「心理的柔軟なリーダーシップ」

心理的柔軟性を身につける3つの要素

1. 変えられないものを受け入れる

行動を起こす際の心理的な抵抗を減らすため に重要

  • 観点 1. 「思考 = 現実」から脱出する
    • 思考と現実が混じり合い、境目がない状態のことを指す
      • 「白黒」をつけたくなったり、自分が悪くないことを証明しようとしたり、相手に非を認めさせようとしたくなる
    • 「白黒」で捉えようとしているなということに気づき 、「『それは○○だなぁ』という考えを私は持っているなぁ。ホントかはしらんけど。」くらい、 思考を軽く取り扱えるように する。
      • 深呼吸して、「相手にも合理的なところはないか」「相手の立場からすると、そういう反応をしっちゃったのかな」と「あるかもしれない他の可能性」について、問を立てて考えることで「白黒」を弱める
  • 観点 2. イヤな気持ちを、コントロールするのではなく受け入れる
    • 専門用語では「体験の回避」と呼ばれる、不快な思考や感情をコントロールしようとする戦い
    • 次のようなことが起こりやすくなる
      • 問題が発生した時、 メンバーを問い詰めたり責任を追求したりする
      • 安心するためだけの検討 を行い、情報は集まるが意思決定されない
      • 嵐が過ぎ去るのをやり過ごそうとする
      • 不安に起因する、マイクロマネジメントや細かな報告書の要求など、「挑戦」をくじくマネジメント
    • 「イヤな気持ち」は、コントロールは役に立たず、むしろコントロールこそが問題を作り出している
      • 受け入れる
      • 「それはちょーどよかった」と言ってみる

2. 大切なことへ向かい、変えられるものに取り組む

  • 前に進むための推進力を与える
  • 重要な取り組み
    • 大切なことの明確化・言語化
    • 大切なことへ向けた、具体的な行動

3. マインドフルに見分ける

  • いま、この文脈で、柔軟で適切な行動をとるために必要
  • 「心ここにあらず」の状態になっているとき、「眼の前で進行中の出来事に集中し、体験する」かわりに、頭の中の「思考」や「感情の渦」にとらわれてしまう
  • 以下が重要
    • 「いま、この瞬間」への気付きと集中
    • 「物語としての私」から「観測者としての私」へ

第3章 行動分析でつくる心理的安全性

「きっかけ → 行動 → みかえり」フレームワーク

人々の「行動」は「きっかけ」と「みかえり」によって制御されている

  • 行動の箱に正しく行動を入れる必要がある
  • 行動にならないカテゴリ
    • 「受け身」〜される
    • 「否定」〜しない
    • 「結果」
  • 「増えるみかえり」のことを「好子(こうし)」、「減るみかえり」のこと「嫌子(けんし)」という

チームの行動変容でつくる心理的安全性

あなた自身の行動が相手にとっての「きっかけ」と「みかえり」の一部となる

「チームの心理的安全性」の4つの因子にあてはめてみる

1. 話しやすさ

  • みかえりを重視する
  • 話し手側のとる「行動」
    • 話し手側の「話す、意見を言う、報告する、連絡する、建設的な反論を言う、尋ねる、確認する、質問する、共有する、雑談する」・・・など
  • 聞き手にとっての反応である「みかえり」
    • 聞き手にとっての「聞く、傾聴する、相槌を言う、お礼を言う」などの「反応」が話し手にとっての「みかえり」となり、重要なポイントだ
    • ネガティブな反応(嫌子出現)を全面的にやめる
    • 好子出現を目指す
  • そんなことを言っても、報告の質が悪かったら?
    • まずは「報告ありがとう」と言う
    • 「行動の品質」と「歓迎したい行動自体」を切り分ける
  • きっかけづくり
    • なんでも言ってね、では何も言えない
    • 具体化する
      • 担当する上で不安なことを教えてください
      • よりよい企画にする上で、もっとこうしたほうがいいという改善案や懸念を思いつきますか?

2.助け合い

  • 「きっかけづくり」を重視する
  • 助けてもらう側のとる「行動」
    • 助けを求める、協力を求める、トラブルやミスについて話す、相談する、お願いする、経緯を話す、これまでの対応と結果を話す、謝罪への同行を依頼する
  • 手を差し伸べる側、協力して問題解決に当たる側の「行動」
    • 聞く、方針を示す、解決策を考える、分担し対応する、業務を引き取る
  • たすけあいの「きっかけづくり」
    • どう?困ってることある?とシンプルに聞く
    • 「相談/報告してほしい」と伝える
  • なぜ?どうして?は文脈的にネガティブなものが多いから使わない
    • 「なに」「どこ」を使う
    • 「なぜこの優先順位なの?」→「なにが大切だと思って、これを最初に実行したの?」
    • 「なぜ失注したの?」→「営業プロセスのどこを改善すると打率が上がりそう?」

3.挑戦

  • 「きっかけづくり」を重視する
  • 挑戦する側の「行動」
    • 試す、工夫する、実験、模索する、企画する、手を上げ機会をつかむ、プロセスを変更する、アイデアを共有する、仮説検証する、新しい行動パターンを取り入れる
  • 挑戦を促進し歓迎する側の「行動」
    • 挑戦を歓迎する、工夫を促す、まず承認する、機会を与える、新しい取り組みを促す、常識はずれを歓迎する
  • 挑戦のきっかけ
    • 顧客の不平不満、悩みや課題を探しそれをなんとかできないかを考える
    • 学びをシェアして「サクッと試してみる」雰囲気作り
      • この本、この記事に書いてあったものを試してみようと思うんですけど、と切り出して試してみる
  • 挑戦のみかえり
    • やめるべきみかえり
      • リスクを並べる
      • 他者事例・成功事例を過剰に聞く
      • 「本当にうまくいくのか?」と聞く
      • 小さな施策を試す段階でROIを追求する
      • 手を挙げると、一人ですべてをやることになり、孤独な戦いになる
      • 失敗したら責任問題となるような発言をする
    • 導入すべきみかえり
      • チャレンジ自体を称える
      • 過程・プロセスを見守る
      • 結果をともに振り返り、ともに学ぶ姿勢を持つ
      • 一連の挑戦を事例として、組織内に周知する

4.新奇歓迎

  • 個性・自分らしさを発揮する側のとる「行動」
    • 自分なりのものの見方・見解を共有する、強みを活かす、得な分野のしごとを引き取り、弱い分野の仕事を委任する、自分が何を大切にしているかを共有する
  • 組織・チームの中で個性の発露を歓迎する側の「行動」
    • 違いを歓迎する、個性・らしさに応じた最適配置・役割決め、さまざまな視点・ものの観方を歓迎する
  • ウィプロ社の研究では、 個人のアイデンティティを重視したグループは他のグループと比べ、より高い顧客満足度に繋がり、また、社員の定着率も33%高かった というデータがある
  • きっかけ
    • 素直に個性を発揮することを促す
    • 「価値づけされた行動」を見抜いて、最適配置する
      • 「価値づけされた行動」とは、やるべき行動ではなく「打ち込む」「その領域では、困難や逆境があっても、行動を取り続けられる」というイメージ

第4章 言葉で高める心理的安全性

「大切なこと」を明確にして、行動を増やす

大切なことを言語化する3ステップ

  1. あなたの「コア業務」つまり、仕事でいつもやっている 重要なこと はなんですか?
  2. その業務には、どんな「大切にしたいこと」や意義・意味を込めることができそうでしょうか?
    • 「わたしは〜大切にしたい」「私が大切にしたいのは〜」と一人称で書く。「〜すること」のように肯定形で書く。
  3. あなたの、その業務の影響を受ける人々や社会について、より広く・深くイメージしてください。その人々にどのようないい影響をもたらすことができそうでしょうか?

第5章 心理的安全性 導入アイデア集

「行動・スキルレベル」で心理的安全性をつくる

  1. まずは「あなた」が率先して行動を変える
  2. 感謝から始める
  3. 「当たり前」から「ありがたい」へ
    • 心の中はコントロールできない が、「とれる行動」の結果としての感謝
    • 仕事であったり、作業、工程に思いをはせることは 自分だけで意図的に「とれる(コントロールできる)行動」だ
  4. ポジティブに気にかけている・見ていることを示す:①話しやすさ、②助け合い
    • 理由を付けて感謝するためには、実際にメンバーを「よく見ている」「普段から気にかけている」必要がある
    • 続けることであなた自身が、 実際にメンバーをよく見ている良いリーダーへ変われる
  5. 話しかける:①話しやすさ、②助け合い、③挑戦、④新奇歓迎
  6. ハードルを下げて、相談を促す:②助け合い
  7. 「のび太刀」を上げる:①話しやすさ、②助け合い、③挑戦
    • リーダーになった途端、「なんでもしっていなければならない」「なんでも出来なければならない」と思い込んでしまうが、その必要はない
    • 助けてもらおう
    • 自己開示しよう
  8. 1on1:①話しやすさ、②助け合い
    • 聞くのは3点
      • よいニュースはなんですか?
      • 悪いニュースはなんですか?
      • いま、不安や不満なことはありますか?
    • メンバーと目線を合わせて一緒に困ってください
  9. メンバーの立場から、心理的柔軟なリーダーをつくる:①話しやすさ、②助け合い
    • 「行動分析」を丁寧に適用してみる
    • ステップ1: 問題行動を具体化・特定する
      • あなたが上司に問題だと感じるのはどのような「行動」でしょうか
    • ステップ2: 望ましい行動を明確にする
      • それをどのような「行動」へと変えたいのでしょうか
      • 具体的な「望ましい行動」を明確にする
    • ステップ3: きっかけ・みかえりを分析する
      • どのような「きっかけ」「みかえり」がその問題行動を維持・強化しているのか
      • あなたのどのような行動がその「きっかけ・みかえり」となっているのか
    • ステップ4: 対応の検討
      • 「上司のみかえり」だとわかっているものを「望ましい行動をとった直後」に発生するように変更できないだろうか?
      • または「上司の問題行動」を維持していた「上司のみかえり」をなくすことはできないだろうか?

「関係性・カルチャーレベル」で心理的安全性をつくる

  1. 「宣言と環境整備」で心理的安全性に目を向ける「きっかけ」をつくる:①話しやすさ、②助け合い、③挑戦、④新奇歓迎
    • 朝礼や会議の場で「心理的安全性」の宣言をする
    • 環境を作る
  2. フォーマットをつくる・変える:①話しやすさ、②助け合い
  3. 新規プロジェクト創造:③挑戦
  4. 日常業務の文脈から切り離す:①話しやすさ、④新奇歓迎
    • 例えば職場のチームで料理をしてみることで、固定化した役職・階層が解きほぐされ新しい観点でチームを捉え直せる
    • 料理以外にも「同じ映画を見て感想をシェア」「対話型アート鑑賞」などほかのものでも良い
  5. 話しやすさについて、皆で対話するワークショップ:①話しやすさ
  6. 価値づけされた行動を見いだす:③挑戦、④新奇歓迎
    • 価値行動を見いだす5つの質問
      • Q1: 一般的なものより高級品をもちたい、またはたくさん持っているものはなんですか?
      • Q2: この領域の仕事は「任せろ」と言えるような仕事は、どんな仕事ですか?
      • Q3: 同じ業種の人や周囲の人と比べて、「相当な量をやっているな」と思える仕事はなんですか?
      • Q4: ついつい、引き受けてしまう役割はありますか?その中ではどんな行動をとっていますか?
      • Q5: あなたが、すでにお金と地位があったら、それでもやり続けたい「みかえりなしで、とれる行動」はなんですか?
      • Q1-5を見ながら、動詞/動名詞(-ing)を1つ「選択」する
      • 私の価値づけされた行動は_________です。となれば良い。
    • メンバーの価値行動をみつける
      • いくつかの仕事を任せてみて、自然にやっている領域の仕事が価値行動に近い領域、自然と遅れがちになる領域の仕事を、価値行動から遠い領域だと考えると良い
  7. 心理的安全性を阻む制度から、育む制度へ:①話しやすさ、②助け合い、③挑戦、④新奇歓迎
    • 「やらなかったら罰を与える」→「やったら褒める」
    • 「望ましくないことを禁止する」→「望ましいことをやり続けたくなるように設計する」
Last Updated: 8/30/2021, 6:53:06 AM