妄想する頭 思考する手 想像を超えるアイデアのつくり方

| Title | Outline |
|---|---|
| Author | 暦本 純一 |
| Published | 2021/2 |
| Read | 2021/8 |
一行まとめ
「妄想」をブラッシュアップし「新しいことを生み出す」ためには「やりたいこと = クレーム(主張)」を言語化し、インプットを増やし、とにかくやってみることが重要である。
要約
- モヤモヤした妄想を「やりたいこと = クレーム(主張)」として1行で言い切れるよう言語化し、ブラッシュアップする
- 集団でアイデアを集めるブレストならまだしも、その場で意思決定(アウトプット)するブレストはワークしないし、多数決ではジャッジできない。最終的なアウトプットはアイデアの責任者がすべし。
- 集団でこそインプットを増やすための会議をすべし。新しいアイデアが出てくる場合が多い。アイデアは「既知」x「既知」、または「既知」x「誰かの既知」の掛け合わせだ。
- いったん眠らせるのではなく、「そもそもの目的」に立ち戻ってピボット(方向転換)する
序章 妄想とは何か
イノベーションのスタート地点には、必ずしも解決すべき課題があるとはかぎらない
課題解決型の真面目なやり方だけでは、予測不能な未来に対するイノベーションを起こすことはできないだろう
- 想像を超える未来を作るために必要なのは、それぞれの個人が抱く「妄想」だと私は思っている。
- 未来の予測ができなければ、当然、「どんな課題を解決すべきか」も分からない。「やるべきこと」が見えないのだから。
- 未来を予測して課題を設定し、「これからの世の中はこうなるはずだ、こういう課題があるはずだ」と想像するところから始まるのは、課題解決型のイノベーションだ。しかしそれだけでは、想像の範囲内での未来しかつくることはできないかもしれない。
第1章 妄想から始まる
悪魔のように細心に!天使のように大胆に!
研究開発のテーマを「天使度」と「悪魔度」の2つの座標軸で評価している
| - | 悪魔度(技術力の高さ)低 | 悪魔度(技術力の高さ)高 |
|---|---|---|
| 天使度(発想力の大胆さ)低 | つまらない レベルが低い | 面白さが伝わらない ひたすらスペックを上げる技術競争 |
| 天使度(発想力の大胆さ)高 | 実現性に乏しい 一発屋、思いつき | 誰にでもわかる 破壊力のあるイノベーション |
第2章 言語化は最強の思考ツールである
モヤモヤした妄想は「言語化」で整理する
- モヤモヤとした頭の中のアイデアをとにかく言語化してみることで、そのアイデアの穴が見えてきて、妄想は現実に向かって大きく動き出す。
- アイデアの表現方法としては、絵や図などのビジュアルも有効だが、それを使うのはどちらかというと「HOW(どうやるか)」を表すときだ。
- アイデアの原点である「WHAT(何をしたいか)」や「WHY(なぜやりたいのか)」などを明確にするのは、言語化が最高の思考ツールだ。
「やりたいこと = クレーム(主張)」は1行で言い切る
- もともと英語の「claim」は「主張」や「請求」といった意味だ。知的財産関係では、「特許請求の範囲」のことを「クレーム(主張)」という。
- クレーム(主張)は「メモ」とは違う。 自分にも他者にもわかるように整理したのがクレーム(主張) だ。
- クレーム(主張)は1行で書き切るのがベストだ。 頭の中ではモヤモヤと無限に広がってしまうアイデアを、できるだけ短いことに落とし込む。
- モヤモヤの中からクレーム(主張)として切り出せるのはなんだろうかと考えることそのものが、アイデアを洗練させていく。
クレーム(主張)は「答え」ではなく「仮説」で
- クレーム(主張)は試験の答案ではないから、一発で「正解」を出す必要はない。
- むしろ、他人からのフィードバックを受けてさらに中身をブラッシュアップするのが目的だ
- つまりクレーム(主張)は、あくまでも「仮説」でしかない。仮説は最終的な答えではなく、検証を受けるために出すものだ。常に正しいことは「ファクト」であってクレーム(主張)にはならない。
- 「太陽は東から上がる」はファクトで検証する価値はない。
- 「この地域では光が雲に反射して太陽が西から昇るように見える現象がある」といったら「本当か?頻度は?メカニズムはどうなっているのか?」と検証したいことがどんどんでてくる。これがクレーム(主張)を提示する価値となる。
- クレーム(主張)は、検証ができる、どうしたら決着がつくかが想定できるような形で書かなければならない。
- 決着のつけられるクレーム(主張)かどうかは、「正しいけれど曖昧」な表現を使ってないかでも判定できる
- 「高機能な」「次世代の」「効果的な」「効率的な」「新しい」「人に優しい」という表現だ。
はじめる前にあらすじを書く
- 良し悪しを知るには、実験や施策などの本格的な研究作業に入る前に、次のような項目に分けてあらすじを書いてみるといい。そのまま論文の「概要」や企画書の「骨子」としても使える。
- 課題は何か?それは誰にとって必要なものなのか?
- その課題はなぜ難しいのか?あるいはなぜ面白いのか?
- その課題をどう解決するのか?(これが最初に思いついた「1行クレーム(主張)」に相当する場合が多い
- その手法で解決できることをどう立証するのか?どう決着をつけるのか?
- その解決手法のもたらす効果、さらなる発展の可能性
決着をつけるための「最短パス」を考える
- なるべく手間をかけずに、そのアイデアが本当に面白いかどうか、実現可能性があるのかを確かめる方法を探す
- 「ウィザード・オブ・オズ(オズの魔法使い)法」
- その時点の技術では実現が難しい機器のユーザーインターフェースを研究する手法
- IBMの「音声で文字を打つタイプライター」の例
- 何も知らない被験者に原稿を渡してマイクの前で読み上げてもらう。被験者が見ているモニターには喋ったとおりの言葉がリアルタイムでタイピングされていくのだが、これはコンピュータがやっているわけではなく、隣の部屋にプロのタイピストがいて、聞いた言葉を手で打っている。試作品を作る手間を省くために、人間で大王したのである。
第3章 アイデアは「既知 x 既知」
ブレストはワークしない
- 本当にブレストによって良いアイデアが生まれているのだろうか?私はこの手法には懐疑的だ
- ブレストでは「良いアイデア」より「その場でウケるアイデア」が出されがちだ。本気で課題を解決しようと思っていても、ブレストの場の盛り上がりに左右されてしまうことがある。
- 「ブレストのためのアイデア」になってしまう
- 何かを発想するときには「面白い」「楽しい」が大事だ。でもそれは手段であって目的ではない。それが目的になると、場の空気を読んで参加者の気持ちを忖度することになる。
- 地味だが良いと思っても遠慮してしまう
- 良いと思って無くても目立つアイデアを出そうとする
- アイデアの「数」も求められるから、生煮えだったり、面白いと思わない不本意な案でも、ブレストを成立させるために出すこともある
- 何かを発想するときには「面白い」「楽しい」が大事だ。でもそれは手段であって目的ではない。それが目的になると、場の空気を読んで参加者の気持ちを忖度することになる。
- クレーム(主張)に意味があるかどうかを解釈するためにかかる時間をブレストは許さない
- ブレストのスピード感はそれを許さない
- その結果、その場でベストと思われたアイデアが、会議から数日経つと「あれ、そのアイデアのどこが良かったんだっけ?」と言われて結局捨てられてしまうことがある
多数決ではジャッジできない
- 多数派が良いと思うものが必ずしもベストなアイデアとは限らない。無難でさほど新しくもないアイデアだということはよくある。
- 一方、自分が「決定打」と思えるほど良いアイデアを出しても、それをきっかけに話があらぬ方向に広がってしまうことも多い。
- アイデアをしっかり理解できていない人が見当違いのバージョンを次々に出したりすると、最初の良いアイデアは埋もれてしまう。
- そんなふうにして自分のアイデアをブレストで台無しにされた経験のある人は多いハズだ。
アイデアには孤独なプロセスが不可欠
- 「あれもいいけど、これもいいよね」というバランス感覚(平等意識)からはイノベーティブなアイデアは生まれにくい
- ブレストでは、他人の意見を「つまらない」と評してはいけないため、どのアイデアも同列に扱われる
- 民主主義的な「平均感覚」はアイデアに関しては弊害のほうが大きい
- ブレストのような集団発想法だと、どうしてもバランスを取ろうとしてしまう
- アイデアの「責任」を負うのは、それを思いついた個人であるべきだ。集団で考えると、責任が分散してしまうので、真剣に考えることが出来ない。
- 自分自身の妄想と正面から向き合って1行のクレーム(主張)にまとめるような言語化作業を集団で助けるような会議であれば、意味があるかもしれない
- 例えば、クレーム(主張)化に必要な課題につ意見を出し合う。しかしみんなでクレーム(主張)をまとめるのではなく、そこで出た意見を持ち帰って発案者が自分で1行に書き下す。あくまでも個人の責任でやりきるのが大事だ。
- あるいは、ブレストでみんなのアイデアを集めたとしても、その場では意思決定をしないという手もあるだろう。集まったアイデアをひとりの責任者に託して「これをたたき台にして、おまえが最終案を決めろ」と決定権を与える。ブレストで出たアイデアを活かしても良いし、すべて捨ててもかまわない。
インプットを増やす会議
- 結局、ブレストがあまりうまくいかないのは、アイデアを醸成するような、本質的には個人的プロセスを集団でやろうとしていることにある
- 集団での議論は個々のインプットを増やすことに向いている
- 自分の研究室で行う会議では、インプットを増やすことを目的とする場合がある。その場でアイデアを出そうとするのではなく、「みんなが知らなそうな面白いものを持ってきて紹介する」会議だ。
- 持って来るのは「みんなが知らないもの」であって、かならずしも「みんなが面白いと思うもの」でなくてもかまわない
- それぞれが自分の価値軸で面白いと感じたもので「みんなが知らなさそうなもの」を持ち寄る
- みんなが面白がりそうなものを持ってこようとすると、「その場でウケそうなアイデア」を出すブレストと同じようになってしまうので注意
- ミーティングでは「どうして自分がそれを面白いと思ったのか」を言語化して説明する
- みんなにもその面白さを理解してもらわなければならない
- これはクレーム(主張)を書いたり、クレーム(主張)の価値をみんなに理解してもらうためのトレーニングになる
- 会社の企画会議では、そこに時間や労力をかける余裕はないといわれるかもしれないが、やってみると「そんなことがあるのだったら、こういうアイデアはどうだろうか」と新しいアイデアが出てくる場合が多いのだ
- アイデアは「既知」x「既知」x「既知」、または「既知」x「誰かの既知」の掛け合わせ
第4章 試行錯誤は神との対話
失敗は課題の構造を明らかにしてくれる
- 失敗が重要なのは、それが 「自分が取り組んでいる課題の構造を明らかにするプロセス」 だからだ。
- エジソンの名言 「私は失敗したことがない。ただ1万通りのうまくいかない方法を発見しただけだ」
- 失敗は成功のもと、と言われるのも、失敗を通じて課題の構造を明らかにしていった先に解決策があったということだろう
見る前に跳べ
- 失敗やダメ出しを怖がる人は、そもそもアイデアの実行になかなか着手しない
- 「見る前に跳べ」という題名の詩や小説があるが、良いアイデアを思いついたら様子を見ていないで手を動かすことだ。
第5章 ピボット(方向転換)が生む意外性
- いったん眠らせるのではなく、そのアイデアを別の形で活かす道もある。一旦立ち止まってピボット(方向転換)するのだ
- プリンターの技術から生まれた光学マウス
「そもそもの目的」に立ち戻る
- 「そもそも何をしたかったのか」を忘れていると、思いがけない展開のチャンスを逃す可能性がある
- 新しい椅子のデザインを考えるとき、「椅子とは4本の脚と座面を持つものだ」という「形」にとらわれていると、アイデアの幅は広がらない。椅子の「そもそもの目的」は形ではなくその「機能」だ。
- 椅子の機能は何かといえば「座れること」にほかならない
- 「座る」とはどういうことかを考えてみるべきだろう