世界最高のチーム グーグル流「最少の人数」で「最大の成果」を生み出す方法

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Authorピョートル・フェリクス・グジバチ
Published2018/8
Read2019/9

一行まとめ

少人数で最大の成果を生み出すために最も重要なことは「心理的安全性」が高い環境をマネージャーが作ることである

要約

  1. 生産性の高いチームには「心理的安全性」が高い。安心して働けるチームをつくることもマネージャーの役目である。
  2. チームメンバーがパフォーマンスを発揮できずにいるのはマネジャーのせいだ。オープンでフランクなコミュニケーションを心がけると、メンバーはもっと力を発揮できる。
  3. 「完璧主義」ではなく「実験主義」であれ。とにかくやってみる
  4. チームメンバーの「個性」に応じて接し方を変えタイプの異なる3人のチームメンバーを組み合わせる

はじめに

心理的安全性とは、「自分らしさを発揮しながらチームに参画できる」という実感のこと。
だれしも「チームの一員として認められたい」という気持ちを持っていると思いますが、簡単に言ってしまえば、その気持ちを大切にしましょうという、それだけのことです。しかも、それは結果を出している世界中のチームがやっていることなのです。

世界共通のチームづくりのルールとは

抜きん出た成果を上げるには、多様性に富んだ「集合知」が必要不可欠

世界のビジネスの最前線では、いわば「チームづくり」というものが改めて見直されるようになっています。どうしてでしょうか。
それは、今日の変化の激しいビジネス環境の中で抜きん出た成果を上げるためには、ダイバーシティ(多様性)に富んだ「集合知」が不可欠だからです。
まあ、考えてみれば当たり前のことですね。1人でできることには限界がある。2人よりも3人、3人よりも4人でつくったほうがいいものができる可能性が高い。しかも集合知というのは、単純な足し算ではありません。いわば掛け算、つまり指数関数的に増えていくものなのです。

ということで、2009年に行われたマネジャーの役割や仕事に関する1万人規模の社内調査が「プロジェクト・オキシジェン(Oxygen、酸素)」でした。

調査の初期段階で、人事の仮説どおり、メンバーのパフォーマンスにもっとも関係しているのはマネジャーの言動だということがわかりました。

そこで、「成果を上げているチームのマネジャーは、何をしているのか」ということをさらに調査・分析したわけです。

優秀なマネジャーの8つの特徴

「チームのパフォーマンスを高めるマネジャーの特性」は、次の8つでした。

  1. よいコーチである
  2. チームを勢いづけて、マイクロマネジメント(チームのメンバーに対する過度な監督・干渉)はしない
  3. チームのメンバーが健康に過ごすこと、成果を上げることに強い関心を持っている
  4. 生産的で成果主義である
  5. チーム内のよき聞き手であり、メンバーと活発にコミュニケーションしている
  6. チームのメンバーのキャリア形成を手助けしている
  7. チームのためのはっきりとしたビジョンや戦略を持っている
  8. チームのメンバーにアドバイスできる専門的技術・知識を持っている

①~⑧の中で一番大事なのは「①よいコーチである」こと。

コーチングというのは、「おまえ、これやれ」などと指示・命令することではありません。 たとえば、「最近どうですか? 今日は少し時間を取って、いろいろお聞きしたいですね。うまくいっていることと、もう少し力を入れなきゃならないことを、ちょっと二人で一緒に整理しましょう」などと対話すること。
「なるほど、うまくいっているのはこれですね。よくできているんじゃない? じゃあ、細かくよくできた理由を考えてみましょう。なんでこんなにうまくいっているんですか?」
そうした質問や応答を通じて、本人に自分がやっている仕事について自己認識させることが、コーチングの目的です。 コーチが行う基本的な質問としては、次のような「GROW」が知られています。

  • G(Goal、目標)
    • 「あなたが望んでいること/目指していることはなんですか?」「興味があることはなんですか?」「何をもって成功したと言いますか?」「それはあなたにとってどれくらい重要ですか?」
  • R(Reality、現実)
    • 「いまどれくらいまで進んでいますか?」「あなたの同僚は状況をどう捉えていますか?」「どんな壁に直面していますか?」「いま、どんなリソース(資源)があったら目標に届きそうですか?」
  • O(Option、行動計画)
    • 「もし、いま直面している壁がなかったとしたら、どう行動しますか?」「あなたがもっとも信頼・尊敬している人が同じ状況に直面したら、どう行動しますか?」「目標達成に必要なスキルをこれから鍛えるとしたら、まず何をすることができますか?」
  • W(Will、意欲)
    • 「(今日から)どうしますか?」「1から 10 でいうと、どのくらいのレベルであなたはコミットしていますか?」「いつから始めますか?」「乗り越えるべき壁はなんですか? どうやって乗り越えますか?」

会社のチームはスポーツチームに似ている

グーグルのチームに関する調査・分析はプロジェクト・オキシジェンにとどまりませんでした。さらに2012年、「生産性の高いチームの特性」を明らかにする「プロジェクト・アリストテレス」に取りかかります。
調査対象は、エンジニアリングの115チームとセールスの 65 チームでした。 生産性の高いチームと生産性の低いチームを比べて、どんな違いがあるのか。いろいろと調査・分析したわけです。

グーグルの定義だと、チームというのは、単に一緒に仕事をしている集団ではなくて、意図的・戦略的に、長期的に一緒に動いている集団のこと。

グーグルでは生産性ではなく、エフェクティブネス(有効性) という言葉をよく使いますが、要は、どちらもアウトプット(成果)のことです。 「成果」というとき、その前提は、あくまでも「経営のトップレベルから見た評価」ということです。

要は、経営のトップレベルが求めている成果をこのチームが出しているかどうかによって、チームの生産性は評価されるわけです。

よいチームには「心理的安全性」が欠かせない

  1. チームの「心理的安全性」(Psychological Safety)が高いこと
  2. チームに対する「信頼性」(Dependability)が高いこと
  3. チームの「構造」(Structure)が「明瞭」(Clarity)であること
  4. チームの仕事に「意味」(Meaning)を見出していること
  5. チームの仕事が社会に対して「影響」(Impact)をもたらすと考えていること

この5つが「チームづくり」にとって根本的に大事なことだというのがプロジェクト・アリストテレスの結論でした。

この5つの中で一番大事なのは、①の「心理的安全性」です。
心理的安全性の高いチームなら、「自己認識・自己開示・自己表現」ができる
心理的安全性とは、端的に言えば「メンバー一人ひとりが安心して、自分が自分らしくそのチームで働ける」ということ。自分らしく働くとは、「自己認識・自己開示・自己表現ができる」ということです。 要は、「安心してなんでも言い合えるチーム」が心理的安全性の高いチームなのです。これが②~⑤の土台になっています。

つまり、この2つのプロジェクトで明らかになったのは、メンバー一人ひとりが安心して、自分らしく働ける場、自己認識・自己開示・自己表現できる場をつくることが、マネジャーの大切な役割であるということです。

GEもメルカリも「心理的安全性の高い会社」を目指している

いまGE(ゼネラル・エレクトリック)は、そうした従来の評価制度を全部やめてしまいました。なぜかと言えば、評価を気にすること自体が社員の心理的安全性を損なうから――。
要するに、会社に評価されるからそうするのではなくて、社員一人ひとりがお互いの「フィードバック」によって自発的に動くという、心理的安全性の高い会社を目指しているわけです。

フリマアプリ「メルカリ」を運営するメルカリ社も、心理的安全性をとても重視しています。
同社のイベントを手伝った縁でチームの反省会、「振り返り」の場に同席したことがあって、どのメンバーもすごく素直で前向きなのが印象的でした。 「ここがうまくできなかった」「ここはできた」と一人ひとりが失敗や成功を全部さらけ出して、「じゃあ、今度はこうしよう」「その仕組みを一緒に設計しよう」といった会話が飛び交っていました。

「愚痴」も「もめごと」もチームによってよいこと

価値観ベースの会話が心理的安全性を高めてくれる

グーグルでは、マネジャーが進行役になって、「ライフ・ジャーニー」というセッションをよくやっていました。
A3の紙に、自分がどんな人生を歩んできたのかを、ターニングポイントにおける「①行動、②その意図、③味わった感情」がわかるように、できるだけ具体的に書いてもらいます。書式は自由です。書き終わったら、4分程度でみんなに説明してもらいます。人生にどんなターニングポイントがあって、どういうふうにいまの自分になってきたのか――。それをもとにディスカッションするわけです。
「へぇ~、知らなかった」「面白い人生だね」「苦労したんだね」といった会話になりますが、 これは、いわゆるファクト(事実)ベースではなくて、「価値観ベース」「信念ベース」の会話です。心理的安全性を高めるためにはこうした会話、つまり「本音」(愚痴も含む)を言い合うことがとても大切なのです。 どんな人であっても「目の前にいる人はいい人」と考える

まず目の前にいるメンバーを人として承認することなしに、チームの心理的安全性を高めることはできない。

ただ、 そうした手法を使う前に、まずメンバーの一人ひとりをそのまま人として承認することが大事です。それがなければ、ワン・オン・ワンなどでどんなにいい質問をしても、メンバーは決して心を開きません。 承認とはわかりやすく言えば、「自分を見ていてくれる」と相手が感じるということです。
要は、きちんとメンバーのことを見ているマネジャーでなければ、どんなにコーチングやファシリテーションをしても成果を上げることはできないのです。

「ワン・オン・ワン」ミーティングがメンバーの時間

グーグルでは、ワン・オン・ワンはマネジャーの時間ではなく、メンバーの時間と考えられています。つまり基本的には、その時々でメンバーの話したいことを話してもらう。といっても、主な話題は自然と仕事のアジェンダ(行動計画)になるわけです。ただ興味深いのは、成果を上げているマネジャーほどワン・オン・ワンのときにプライベートな相談にのっているという傾向があること――。
何かプライベートな問題を抱えていると、仕事のパフォーマンスが落ちてしまうというのは、本当によくあることです。

つまり、プライベートな問題をマネジャーに話せるということは、よほどメンバーの心理的安全性が高いということを意味しています。だからこそ、チームも高い成果を上げられるのです。

決してタスク(作業)を管理するための打ち合わせではない

あくまでも、 マネジャーとして問題なのは、チームメンバーがプライベートなことが気になって仕事に集中できないことです。

「愚痴」が出たら会話のキャッチボールを始める

マネジャーの役割は、言うまでもなく「チームづくり」なのですが、その役割を果たすうえで重要になるのが「建設的」 というキーワードです。  たとえば、チームづくりのときに必須なのは「建設的な言葉づかい」で、わかりやすいのは「愚痴を要望にして言い返す」という会話法です。 「うちのメンバー、最近、私の話を聞いてくれないんだよね」
よくありがちな愚痴ですが、こう返す人が多いのではないでしょうか。
「はあ、そうなんですか、大変ですね」
愚痴をそのまま聞き流すというパターン。また男女差もあるようです。男性は、「ああ、それならこうすればいい。だからもう悩むな」などと解決しようとするというか、話を終わらせる。女性は、「ホント、イヤね。○○ちゃん、頑張って」などと励ます――。
建設的な「要望」で返すなら、そうではなく、次のような言い方になります。 「じゃあ、○○さんは、メンバーにもっと話を聞いてもらいたいんですね?」とか「話を聞いてもらえたら、何かが変わるんですね?」というふうに、相手のネガティブな発言をポジティブな表現に言い換えて聞き返すわけです。
そうすることで、自分から次のアクション――この例で言えば「話を聞いてもらうにはどうしたらいいのか」――に進むことができるわけです。

愚痴を言っている人というのは、じつはすごくチームを手伝おうとしているのではないでしょうか。チームのことをいつも気にかけて見ているからこそ、「直したい、改善したい」と常に考えている。 ただ、その思いが愚痴になって出てきているだけなのです。

会話を通じて、チームメンバーの選択肢を増やしてあげる

人は、相手の邪魔をしたいといったネガティブな動機ではなくて、根本的にはポジティブな意図で動いていている と考えるようになりました(たとえばアルコール依存症にしても、良し 悪しは別にして、「お酒を飲んで、落ち着きたい」というのは前向きな欲求でしょう)。周りに迷惑をかけるのは、単にやっている手法が間違っているだけと

「自分の弱み」を積極的に開示できるマネジャーは強い

弱みを見せないマネジャーでよくありがちなのは、「これ明日までにやっておいて!」とだけ言い残して、自分はさっさと会社を出てしまうというパターン――。
残されたメンバーたちは、きっとこんな文句を言うでしょうね。
「また丸投げだよ。なんでいつも外出なの? あの人ってホントに仕事してんの?」
弱みを開示できるマネジャーは違います。一言ですませることはありません。
「本当に困っちゃって、一つ頼みごとがあるんです。じつは新しいプロジェクトが始まって、今度からA社にいろいろお世話になることになったんですね。まだみんなにちゃんと報告してないけど、大きなプロジェクトになる予定なんです。で、そのプロジェクトミーティングが明日入ったんですよ。ただ、僕ずっと今日は外での打ち合わせが立て込んでて、その企画書の準備ができなくて。だから本当に申し訳ないんですけど、簡単なものでいいのでつくってほしいんです。残業になってしまうから本当に申し訳ないけど、お願いできますか? 今度ご飯をおごるから」
どちらのマネジャーと一緒に働きたいか。明らかに後者ですよね。

相手を見下すリーダーの成功は長続きしない

僕がこれまで見てきた 優秀なマネジャーの共通点は「腰が低い」 ということです。

腰の低さ、つまり謙虚さはまさにリーダーシップの土台なのです。

メンバーと仲間になれないリーダーの特徴

ときにはメンバーがマネジャーを叱ることだってあるし、マネジャーだって叱られても仕方がないような間違いもする。それでも、チームとして前向きに頑張っていけるようなみんなの心理状態――。つまり、チームのメンバーとマネジャーの関係というのは「仲間」なのです。
ところが、チームの中で完璧に振る舞おうとするマネジャーがよくいます。「私のようにやらないとダメ」という感じで、メンバーに完璧なお手本を示そうとする。その努力は認めますが、そう考えている限り、決してメンバーと仲間になることはできないでしょう。

もめごとは、チームの生産性を上げる絶好の機会

マネジャーがやるべき仲裁というのは、何も一方的に解決策を提示することではなくて、当事者の言い分を穏やかに聞き出す ということなのです。

愚痴を要望に言い換える

多くの場合、マネジャーがチーム内で起きている感情的な衝突を知るのは、やはり、メンバーの「愚痴」でしょう。 「Bさんって、ひどくないですか?」
そうAさんに愚痴られたときも、マネジャーの対応は「承認のエクササイズ」のアレンジが効果的です。
「ああ、AさんはBさんに〇〇してほしいということですね?」
「まあ、そうですね」 「○○してほしいとBさんに言ったことがありますか?」
「ないです」
「じゃあ、今度のチームミーティングのときにBさんに提案してみてください」
簡単ですね。 愚痴を「要望」に言い換えて、ちゃんと認識してもらって、建設的な話し合いの方向に誘導してあげればよい だけです。

チームのパフォーマンスを向上させる「良質な会話」

チームのパフォーマンスを上げるには、雑談が大事

ある日本の大手広告代理店で、パフォーマンスを出しているチームとそうでもないチームを比較するプチ研究を行ったそうです。その結果、パフォーマンスを出していないチームは仕事の話ばかりしていて、パフォーマンスを出しているチームは雑談ばかりしているという、会話内容の違いが見つかったと言います。

よい雑談を引き出す「7つの質問」

  1. 「あなたは仕事を通じて何を得たいですか?」 「プロとしてキャリアを積んでいきたいです」
  2. 「それはなぜ必要ですか?」 「娘もいるし、もっと給料が欲しいし。だから、もっと頑張って成長したいんです」 「なぜ、成長することが大切なんですか?」 「娘のために、もうちょっとかっこいいお父さんになりたいからです」 「じゃあ、あなたは娘さんのため働いているんですね」
  3. 「何をもっていい仕事をしたと言えますか?」 「家に帰ってニコニコしていられるときには、仕事もうまくいっていますね」
  4. 「なぜ、いまの仕事を選んだんですか?」 「あんまり深く考えずに、新卒で入っちゃいました」 「なぜ、いままで続けられているんですか?」 「やってみると楽しかったからです」
  5. 「去年と今年の仕事はどういうふうにつながっていますか?」 「去年はいろいろ頑張って、今年はその成果がちょっと出てきています」
  6. 「あなたの一番の強みはなんですか?」 「いま話してみて、私の強みは頑張ること、努力だと思いました」
  7. 「あなたは、いまどんなサポートが必要ですか?」 「やっぱり成長したいから、もっと大きいプロジェクトを任せてほしいですね」

①の「仕事を通じて何を得たいか」と②の「なぜ必要か」というのは「価値観」や「信念」、③の「何をもっていい仕事と言えるか」と④の「いまの仕事をなぜ選んだか」は「基準」や「モチベーション」にかかわる質問です。
⑤の「去年と今年の仕事のつながり」は、本人が「成長」に気づくための質問。プラスのことが言えない場合もありますが、この質問の目的は、あくまでも「過去の自分とは変わっている現在の自分」に気づかせることです。なので、本人が自分の変化に気づいていれば、無理に質問を重ねる必要はないでしょう。
⑥の「強み」と⑦の「サポート」はマネジメントのためには必須の情報です。チームレベルだけでなく、人事異動のような会社レベルの判断にも役立ちます。

感謝の気持ちがチームの生産性を上げてくれる

人間関係がよくないと、お互いが本来やるべき仕事に集中できなくなります。 たとえば、一つの業務について「今日中にこれをしておいてください」「はい、やっておきます」となっても、不信感を抱いているマネジャーは「どうやっているのか」「あれはできたのか」「これはなんでこうなっているのか」といちいち管理する――マイクロマネジメントの状態になりがちです。メンバーはメンバーで「なんでうちのマネジャーは、こんなに細かくチェックするんだろう」と疑念を持ち、パフォーマンスが下がってくるでしょう。そんな状態のチームの生産性が上がるはずはありませんね。

ちなみに、「なぜ」という疑問形(英語のWhy)は、ファクトベースの質問で使うと、相手は責められているように感じがち です。

つい萎縮してしまって「それは私の判断ではなくて、クライアントの指示で……」などと、自分を正当化する言い訳のような返事をしてしまいがちです。

「フロー状態」を増やせば、生産性は上がる

マネジャーの大事な役割として「メンバーのパフォーマンスを向上させること」と述べましたが、近年のハイパフォーマンスの研究では、アメリカの心理学者ミハイ・チクセントミハイが提唱している 「フロー理論」(チャレンジとスキルが釣り合う状況で、物事に没入する体験や状態に関する理論) が注目されています。
フローとは、簡単に言えば「夢中になる」こと。自分にとって興味があることを一生懸命やっているという状態です。フロー状態は、普通は8時間働く中でわずか 30 分しかないとされていて、その状態が1時間半に延びると、生産性が2倍になるといった研究結果が出されています。
フロー状態ではドーパミンやエンドルフィンなどの神経伝達物質の分泌が増えるおかげで、幸福感が高まってストレスも下がるとも言われています。
要は、 マネジャーの役割は「メンバーのフロー時間を延ばすこと」とも言えるわけです。

「思考の多様性」がないと、新しいアイデアは生まれない

思考の多様性がないと、新しいアイデアは生まれない――。 そんな極めてシンプルな「法則」をわかっていないマネジャーが案外多いのではないでしょうか。

入社2年目の若い女性社員がきて、僕に向かって一生懸命、今回のイベントについて話すわけです。「こういうふうに考えてこうした」とか「もう少しSNSで広げればよかった」とか「マーケティングはこうすればよかった」とか。聞いていると本当にいいアイデアばかりで、僕はとても感心しました。
ところが、隣にいた社長の反応はぜんぜん違いました。彼女の言おうとしていることが理解できないのか、すぐに僕たちの会話に割って入って、「おまえ、それはな……」「ここでする話じゃない」などと上から目線で彼女の話を止めようとするのです。 せっかく出てきたアイデアを聞こうともしない、最悪ですね。この社長はダイバーシティ=思考の多様性の価値をまったくわかっていないのでしょう。

現実的にやるかやらないかは、また別の話で、「インスタは無理」→「でも、ちょっと考えてみよう」→「インスタは写真だけじゃない」→「だったら、マンガ?」→「いいね、変な外国人キャラ」というふうに会話がつながって、新しいアイデアが生まれました。 ダイバーシティの会話というのは、こうしたものです。

チームメンバーが仕事ができないのは、マネジャーのせい

ところが、多様性の一端を担う大切なチームメンバーに対して、「あいつは仕事ができないから」などと投げやりになっているマネジャーも少なくありません。
けれども僕が知る限りでは、そもそもマネジャーが「マネジャーの仕事」をしていないせいでメンバーがパフォーマンスを発揮できずにいるケースが多いのです。

理想を言えば、 マネジャーが行うコーチングというのは、一瞬一瞬、日々の会話の中で行われるべき です。「そうか、〇〇と思うんですね。なぜそう思ったんですか?」「なるほど。ただ、〇〇以外の選択肢もありますよね。一緒に考えてみましょう」「じゃあ、私はこれからどんな支援をすればいいですか?」――。
普通に会話している中でオープン・クエスチョン(二者択一ではなく、自由に意見を言える質問)とフィードバックを繰り返す。その一瞬一瞬がコーチングであって、その積み重ねによって本人がさまざまなことに気がついて、おのずと変わっていくわけです。

もちろん、適材適所によって本人たちのモチベーションはすごく上がります。モチベーションは、 「目的(Purpose)」「熟達(Mastery)」「自主(Autonomy)」 の3つの要素がそろうと、上がりやすいと言われています(

オープンなコミュニケーション

感情レベルの対立をきっかけにして、「何が欲しい」「こういうことが欲しい」というアイデアベースの会話を経験すると、「自分の話を聞いてくれる」と実感できます。すると、感情的になりがちなメンバーの態度も、次第に建設的な態度に変わってくるのです。 同じ「対立」であっても、アイデアベースのほうを増やしていけば、それに応じて、感情のレベルのほうは自動的に減っていきます。

“一瞬”で差をつける「チーム時間」の使い方

完璧は遅すぎます。

要は、自分一人で完璧なものを仕上げるのではなくて、ある程度できたもの(ドラフトやプロトタイプなど)で、とりあえず「これ、つくってみたんだけど、どう思う?」とメンバーに聞く。その「試作品」についてみんなでディスカッションすれば、いろんなアドバイス、フィードバックがもらえるわけです。そうすると、よりよいものができあがるし、断然スピードも速いわけです。   これが僕の言う「集合知」です。 つまり、よい集合知を得るには、 「完璧主義」ではなく「実験主義」 でなければならないということですね。

「働くこと、仕事って楽しいよね?」とか「素早く実行することが大事だよね?」といったことを確認しながら、「予期せぬことを提供していこうよ」「それって、具体的にどういうことなんだろう?」などと議論を深めていったわけです。 内容面で言えば、我ながら特徴的だと思うのは「冗談なしに真面目な話をしないこと」 とか「反対意見を積極的に、チャーミングに言おう」 といったルールですね。 冗談のように感じるかもしれませんが、じつは安心してなんでも言えるという「心理的安全性」を高めるのに、とても有効なルールだと思っています。

アイデアが対立したとき、感情的になっていては建設的な意見が出てきません。そのアイデアに反対でも、その発案者を責めるのではなくて、「ここをもっとかっこよくできるんじゃない?」というふうに、アイデアそのものに対して、建設的な言葉づかいでアドバイスをすることが大事なのです。

心理的安全性があれば、挑発だってできる

定例のミーティングでは、直近の業務を確認し合うだけではなく、「次の選択肢」が増えないと意味がありません。 たとえば、「これ、まだできていません」「そうですか、じゃあ、引き続き頑張ってくだい」といった会話はまったく無意味。いわば、元気がないのです。いまのやり方で仕事が前に進まないのは、プロセスがうまく回っていないからでしょう。情報が足りないとか権限がないとか、何か原因があるはずです。そうならば、その解決のための選択肢について、みんなで建設的なアイデアを出し合うべきなのです。

チームメンバーとの会話を通じて、自分自身をアップデートする

マネジャーとメンバーとの会話に多くの学びがあるチームは、必然的に集合知が充実してきて、生産性も上がっていくことでしょう。

つまりマネジャーは、たとえ定例のチームミーティングであっても、いい意味でのプレッシャーをつくったほうがよいのです。先に述べた「挑発」には、学習の機会を促すという効果もあるわけです。
マネジャーからいきなり質問が飛んでくる。メンバーは即応的に自分の意見を言わなければいけない、そのためには常に準備をしてミーティングに臨まないといけない――。
こうしたいい意味でのプレッシャーは、メンバーのチーム参加の態度をより積極的なものに変えます。

話し合いで大事なのは、量よりも質

アウトプットのクオリティ(質)を下げてクオンティティ(量)を出すことには、まったく意味がありません。

日本の大企業でもファシリテーションやワン・オン・ワンを導入する会社が増えていますが、実際に現場を見てみると、成果を出すためではなくて、単にアジェンダ(行動計画)を進めるための手法になっているように感じます。
メンバーが持ってきたアジェンダについて、「これは達成、これはまだ」といった具合にチェックして、一人3分で終わりという打ち合わせが多いのです。まさに質より量の態度ですね。そうではなくて、話し合いで大事なのは量よりも質のほうなのです。

けれども、 長期的なパフォーマンスで考えれば、アジェンダがなくなったときに柔軟に対応できるというのは、とても大事なスキル なのです。

計画主義では生産性を高められない

グーグルでは、 アンコンシャス・バイアス(Unconscious bias、無意識の先入観・偏見)、つまり自分では気がついていない自分の先入観や偏見について、そして バイアス・バスティング(Bias busting、先入観・偏見を壊すこと) について、全社員を対象に研修を行います。自分の先入観や偏見に気づいて、それをなくしていくことを意図的に教育しているのです。

大事なのは成果。そこに至る道筋は1つではない

「私がつくったアジェンダはどうでもいい。あなたのアジェンダを重視します」というような態度は、主体性がないように見えて、ある種かっこ悪いかもしれません。けれども、自分の計画を変える見直しによって、メンバーのモチベーションは確実に上がるわけです。
どちらが本当にかっこよい態度なのか、答えは明らかでしょう。 アジェンダの方向性が変わったら、マネジャーはむしろ率先して柔軟に対応を変えるべき です。
要するに、大事なのは成果、アウトプットであって、そこに至るための道筋は一つではないのです。一度決めた計画に固執するマネジャーは、そうした本質的なことがわかっていない。だから、一瞬で対応を変えることに抵抗を感じて、従来どおりのアジェンダを守ろうとするのでしょう。

「クリエイティブ・カオス」を目指す

「クリエイティブ・カオス」は挑発によって生まれる

挑発によって、チームは「クリエイティブ・カオス(創造的混沌)」の状態になります。

チームがカオス状態になると、メンバーはその状態を早く抜け出そうと、より集中して考えたり、アクションを起こしたりします。

習慣化すると、メンバーはどんな状況でも「困った、どうしよう・・・」と立ち止まったり戸惑ったりしないようになります。「困った、でも、やってみよう!」とか「やってみたけど、どう?」というふうに、いわばマネジャーよりも早く動ける人材に育つわけですね。

「インパクト」と「成長」を追求しない「オールドエリート」

日本の大手企業でありがちなのは、「失敗したらだれが責任を取るのか?」「他社はどうしているのか?」などと言って、管理職が(ときには経営者も!)現場のビジネスパーソンの自発的な言動をむやみに止めようとする動きです。
それは経営判断の核心であるインパクトと成長とは、まったく逆の動きなのです。本当にひどい話ですね。
そのような人たちのことを僕は「オールドエリート」と呼んでいます。新しい価値を生み出す「ニューエリート」に対して、「オールドエリート」です。 詳しくは拙著『ニューエリート(NEW ELITE)』(大和書房)で説明していますので、そちらもご参照ください。

オールドエリートニューエリート
性質強欲利他主義
要望ステータスインパクト・社会貢献
行動計画主義学習主義
人間関係クローズドオープン(コミュニティ作り)
考え方ルールを守る新しい原則を作る
消費行動誇示的消費ミニマリズム

マネジャーによるコーチングは「ゲームで高得点を取る」だめの教育

たとえば、新人がチームに入ってきたとき、マネジャーはどう教育すればよいのか。

日々の業務の中で、マネジャーが会話を重ねることによって、彼・彼女たちのパフォーマンスは上がってくる のです。

たとえば資料づくりを任せるなら、「はい、じゃあ、これ明日までやっておいてね」と丸投げするのではなくて、「じゃあ、一緒にやってみよう。〇〇のための資料だけど、どういうふうにつくる?」と、まず尋ねましょう。
「なるほど、そうやるんだね。確かに、それならこの部分ができあがるけど、プラスアルファを考えたら、これもやったほうがいいかもしれない。どう思う?」
「なるほど。じゃあ、〇〇というキーワードをネットで検索したら、こんな記事が出てくるはずだから、それを読んでもう少し考えてみようか?」といった会話を重ねます。そして、
「完璧なものじゃなくて、まずドラフト(草稿)を今日中につくってみてね」 ドラフトができあがったら、それについて会話を重ねます。
「ああ、いいドラフトだね。この映像が面白いし、この図もいいね。じゃあ、このテキストをこうすれば、もっとかっこよくなるんじゃない?」
今日つくったものについては今日中に、その場でどんどんフィードバックする――。

メンバーに対する一瞬一瞬のコーチング的な働きかけは、メンバーに「マネジャーがずっと見守っていてくれる」という安心感や信頼感、つまり心理的安全性をもたらします。

「フィードバック」から「フィードフォワード」へ

フィードバックという言葉を使ってきましたが、僕は、じつは 「フィードフォワード」(結果を予測して、事前に行動を変えること) のほうが大事だと考えています。

「やった後」ではなくて「やる前」の会話がフィードフォワードです。

一瞬一瞬の働きかけが、チームの「柔軟性」を高める

フィードフォワードとフィードバックを繰り返して本人の気づきを促し成長させる。ただ、チームとして成果が上がるように明確な指示も出す。 そして、それがうまくいくためにはチームの「心理的安全性」、マネジャーとメンバーの信頼関係がとても大事になってくるわけです。
繰り返しになりますが、メンバー一人ひとりを尊重できない、信頼できないマネジャーのもとでは、チームは建設的に動いてくれません。

チームの集合知を含めた生産性を高めるには、ボトムアップとトップダウン両方を適切なときに受け入れてくれるメンバーのマインドセットが不可欠 なのです。

行動前、行動中、行動後。「振り返り」は3回行う

ラーニング・アジリティでは「振り返り」も大事です。アメリカの軍隊では 「Reflection before action, Reflection in action, Reflection after action」 とよく言われるそうです。リフレクション(Reflection)というのは「熟考・反省」、つまり振り返りですね。「行動する前に振り返れ、行動中に振り返れ、行動した後に振り返れ」 というわけです。

チームの場合には、「プレミーティング」が「Reflection before action」に当たります。

そして ミーティングが始まったら、「Reflection in action」。

「最少の人数」で「最大の成果」を生み出す方法

チームメンバーの「個性」に応じて接し方を変える

よい人間関係を築くためには、内容を含めて、その人が信頼してくれるような話し方や接し方をしなければいけない

グーグルでは毎週金曜、午後5時から「TGIF」(Thanks Google, It's Fridayの略で、もとはThanks God, It's Friday〈ありがとう神様、今日は金曜日だ〉)という、飲み物や食べ物も出る全体ミーティングが行われていました。

メンバーそれぞれが何を望んでいるのかをマネジャーがうまくつかめば、個々のモチベーションも高くなるし、チームの生産性も上がるということです。

また、メンバーの「能力(Skill)」と「意欲(Will)」に応じて、接し方を変えることで、チームの生産性を上げることができます。
これは 「シチュエーショナル・リーダーシップ」 として知られたフレームワークです。

意欲(Will) 低意欲(Will) 高
能力(Skill)高「励ます」
・タスクの重要性を伝える
・感謝を伝える
・モチベーションを引き出す
「委任する」
・定期的に褒める/同意する
・クオリティ指標を示す
・リスクを共に管理する
能力(Skill)低「指摘する」
・ゴール、プロセス、
 その理由を明確に説明する
・タスクを成長機会とする
・理解度をこまめにチェックする
「手を取る」
・タスクを成長機会とする
・基本と期待を明確に示す
・こまめにフォローする
・コーチングをする
  • 委任する
    • 能力も、意欲も、高いケース。
    • 定期的に褒めたり、同意したりするだけでなく、クオリティ指標を示すことで、共にリスクを管理する
  • 励ます
    • 能力が高く、意欲が低いケース
    • タスクの重要性や感謝を伝えることで、モチベーションを引き出す
  • 手を取る
    • 能力が低く、意欲が高いケース。
    • 基本と期待を明確に示し、小まめにフォローしたり、コーチングしたりすることで、成長を促す
  • 指揮する
    • 能力も、意欲も、低いケース。
    • ゴール、プロセス、その理由を明確に説明し、理解度を小まめにチェックすることで、タスクを成長機会へと変える

1人のマネジャーに対し、チームメンバーは7人以内

グーグルの考え方では、1人のマネジャーが十分に面倒を見られるメンバーの数は7人以内。頑張っても 10 人以内とされていました。ちなみに、リクルートでは、理想は1人のマネジャーにチームメンバー6人以内といわれているそうです。

ちなみに、グーグルでは毎週のワン・オン・ワンなら 50 分というのが基本で、 10 分は移動などの時間と捉えていました。また、会議などの時間設定は、 30 分刻みが基本。うち 25 分が実質的な会議などの時間で、残り5分が移動などの時間という発想です。

タイプの異なる3人のチームメンバーを組み合わせる

「ディズニー・ストラテジー」 という有名な「戦略」があります。ウォルト・ディズニーは映画を制作するとき、アイデアから実現に至るプロセスの中で相談するメンバーを必要に応じて変えていたといいます。
一番初めは ドリーマー(夢想家) たちとのブレスト。我々は何をするべきか、なんの制限も考えずにアイデアを出し合う。「まず大きい話、夢の話をしよう」ということです。
アイデアが固まったら、次は リアリスト(現実主義者) たちと話し合う。いかにそれを実現するか。いまどんなことができるか。実現可能な事柄をあげて、「こういう動きでやってみよう」と具体的なプランをつくります。
そして最後に、 クリティック(批評家) たちに「こういうプランをつくったんだけど、どうかな?」と相談する。どんなリスクがあるのか。どんなネガティブな影響があって、どこから抵抗がありそうなのか。ネガティブな要素を建設的に洗い出すことで、まずはこれ、次はこれと、本当にアイデアを実現させるためのプロセスが完成するのです。

チームミーティングでは話し合うテーマによって、ドリーマー的な人が活躍するときもあれば、リアリスト的な人やクリティック的な人が貢献するときもある わけです。

たとえば、グーグル流に「OKR」(第6章で詳述)の共有システムを導入しようとチームミーティングを行ったときのこと。
グーグルでは、社員みんながそれぞれのOKRを登録していて、その進捗状態をトラッキング(追跡、追尾)できるシステムになっています。
それを提案した僕は、いわばドリーマーですね。一方、アシスタントの女性はクリティック。いつも「そもそも間違っているんじゃない?」「面倒くさいね」などと、いい意味で慎重な指摘をしてくれます。
もう一人の若い女性スタッフはリアリスト。なので、僕は彼女に確かめるわけです。 「どう思いますか? 面倒くさいですか?」「ああ、いいと思います。みんなでまず使ってみて面倒くさければ違うシステムにすればいいんじゃないですか?」というような、現実的な答えが返ってくるわけです。
そうすると、否定的だったアシスタントの女性も「じゃあ、試してみようか」となって、「ただ、こういうところが心配」といった単なる批評にとどまらない、アイデアの実現に向けた建設的な意見を言ってくれるようになるのです。

異なる個性を組み合わせるにはルールが必要

加えて、建設的な議論のためには、マネジャーによるファシリテーションが非常に大事になってきます。

たとえば、よくありがちなのは、アイデア出しのブレストであるにもかかわらず、「これ、うまくいかないんじゃないの?」などと、クリティック的なメンバーが批判し始めるというパターン――。
なぜ、求められていない行動を取る人が出てくるのか。それはマネジャーがファシリテーションしていないからですね。「アイデアを出す時間ですよ」ということをしっかり前置きすれば、こうした非生産的な批判は出てこないはずなのです。

「いまから、みんなでアイデアを出し合って、一番いいアイデアを選びましょう。だから批判するんじゃなくて、とにかくいろんなアイデアを出してください」などと、初めにその場の「ルール」を明確に伝えておく。
メンバー全員が共通の認識を持つわけです。

それでも、そもそも論的な批判がでてきたらどうするのか。

「わかりました。賛成できないんだったら、あとで時間をつくるのでそのときに話してください。だから、いまはポジティブなアイデアを考えてみてください」
こんなふうに、穏やかな口調でお願いすればよいのです。そして日を改めて、そもそも論的なテーマについて話すチームミーティングの機会をつくって、約束を果たすこと。マネジャーがメンバーに信頼されるためには、こうしたフォローも大事ですね。

「プレイング・マネジャー」になってはいけない

「ポートフォリオ・マネジャー」になろう

全部のプロセスを考え直して、大胆に業務を委託したりテクノロジーを使ったり出来る「ポートフォリオ・マネジャー」でなければ、生産性を大きく向上させることはできないのです。

「この仕事には、やっぱり部下が5人いないとダメですね」などと思考停止になっているのが日本式のプレイング・マネジャーでしょう。
そうではなくて、「コンサルを入れましょう」とか「派遣社員を入れましょう」とか「クラウドソーシングでやってみましょう」というふうに、人材やテクノロジー、プロセスをいかに最適化するかを常に考え続ける――。それが ポートフォリオ・マネジャー なのです。
日本式のプレイング・マネジャーにありがちなのは、「メンバー5人のチームだったら5人を使わないといけない」と思い込んでいること

けれどもよく見れば、なんの価値も生み出していない人がいて、その人にとってもこのチームにいる時間に意味がない。となると別のチームに異動してもらって、そこで貢献してもらうほうがいいわけですね。また、テクノロジーを取り入れるなどして、プロセスを改善したなら、5人ではなく3人でできる仕事なのかもしれません。
チームを小さくすることでコストが下がるし、会社全体としても、メンバーの異動によってより有効に人材を活用することができるのですから、生産性の向上につながる わけです。
また、業務委託やテクノロジーの導入によって、時間に余裕ができたメンバーはより価値の高い仕事に注力できるようになるはずです

固定化されたチームは弱い

アイデアやミッション次第でメンバーが増えたり、入れ替わったり、新しくできたりするのがチーム

チームの固定化はブランディング面でもマイナス

たとえば、「うちのチーム、めちゃくちゃ雰囲気が悪い」と思っていても他のチームに移れないと、そのメンバーは誇りが持てなくなって仕事をサボるようになるでしょう。そして、結局は会社を辞めていく。チームの雰囲気はますます悪くなってブランド力も低くなって、欠員を補充しようとしてもだれもチームに行きたがらない――。
つまり固定化によって、チームのブランディングが妨げられてしまうわけです。別のチームに移ることができるという仕組みさえあれば、そうした悪循環は起こらないはずです。

前例をつくって、自分が手本になっていく

リーダーシップで大事なのは 「リード・バイ・エグザンプル(Lead by example)」 、前例をつくって自分が手本になっていくという考え方

よく使われる比喩で言えば、「ファースト・ペンギンになれ!」ということです。ペンギンの群れでは、先頭び1匹がリスクを取って海に飛び込むと、それを追うようにして次々にペンギンが飛び込みます。リード・バイ・エグザンプルとは、まさにこれなのです。

「ギャング化」するリーダーの特徴

ただ、 注意しなければいけないのは、チームを会社のために動かさず、自分のために動かそうとするファースト・ペンギンもいるということ です。僕は、そうしたマネジャーが率いるチームを「ギャング」と呼んでいます。
ギャングマネジャーの特徴は、とにかく自慢と文句が多いこと――。 たとえば、「うちのチームってすごいよな。隣のチームを見てみろよ、あいつらぜんぜん働かないよな」などと言いつのります。また、ある意味で面倒見がよくて、「みんな、飲みに行こうぜ!」などと徒党を組みたがります。

ギャングマネジャーにありがちなのが、メンバーを引き抜いて起業するパターンですね。外資系ではよくあるケースなので、少なからず見てきましたが、起業して成功したギャングはほとんどいませんでした。確かに仕事はできるのですが、相変わらず自分のために会社を動かそうとするので、どんどん周りから信頼されなくなっていくのです。
とりわけ日本では成功しません。あくまでも自分が軸で、相手が望んでいるかどうかは気にせず、自分重視のコミュニケーションを繰り返すギャングマネジャーは、自分の言いなりになる人だけが周りに寄ってくればいいと考えます。

劇的に生産性を上げる仕組みの作り方

まずは、ちゃんとしたものでなくていい。とにかくやってみる

低コストということで言うと、グーグルには 「ビィ・スクラピー(Be scrappy)」 という、いわば合言葉がありました。
スクラピーというのはスクラップ=くず、残り物のこと。ちゃんとしたものでなくていい、一番安いものを使ったり既存の断片を集めたりしてとにかくやってみるという考え方です。コストパフォーマンスを高めて、素早い動きを繰り返すための合言葉ですね。
グーグルのエンジニアチームの早めに失敗する仕組みは、「ビィ・スクラピー」そのものと言えるでしょ

「OKR」で各メンバーの自発的なゴールを設定する

よいOKRの条件

  1. 大局的視点に立った戦略目標を、測定可能な具体的目標と組み合わせる
  2. 野望を掲げる
    • 達成度 70%程度がうまく練られたOKRで、達成度100%は質の低いOKRと判断される
  3. 全員実践する
    • 社内の全員がOKRを実践し、面談で定期的に振り返る
  4. OKR≠評価
    • OKRのスコアを「直接の評価」にはしないことにより、社員が正直に自分のパフォーマンスを振り返るようになる(ただし、工夫次第で評価にも生かせる)
  5. OKRは最大インパクトをもたらす目標に絞る
    • 業務全体を網羅しようとせず、特別力を入れるべき分野に絞ってもよい

また、OKRは「SMART」でなくてはなりません。SMARTとは、目標設定時のポイントとして知られているフレームワークで、次のような意味です。

-説明
S(Specific、具体的)何に取り組むのかが、だれにでもわかる
M(Measurable、測定可能)数値化でき、計測できる
A(Attainable、達成可能)頑張れば達成可能な目標を設定する(簡単すぎても、難しすぎてもいけない)
R(Relevant、関連性)組織やチームの目標に関連している
**T(Time-bound、期限期限を設けて、期限までに達成する

加えて、OKRを運用する際には、次のような点に気をつける必要があります。

  1. 四半期の初めに経営陣が会社のOKRを設定し、社員が自分のOKRと一致させる
  2. OKRはいつでもだれのものでも見られるよう開示する
  3. 定期的なワン・オン・ワンで振り返ることで、習慣づける
  4. 目的に応じて、評価制度との組み合わせを工夫する(たとえば、成果重視なら達成スコアを評価に反映する、姿勢重視なら取り組む姿勢を数値化し評価にプラスするなど)
  5. 組織全体で支援し、他メンバーのOKRにもコミットする文化を醸成する

基本的にOKRは、トップダウンで決められている「KPI」(重要業績評価指標、たとえば営業だったら売上目標の金額や顧客訪問の回数など)を考慮しながらも、四半期ごとにボトムアップで設定していくものです。なおかつOKRは、見直しや調整が前提です。

OKRは経営トップが設定している大きいミッションと密接につながっています。いくらボトムアップとはいえ、その枠組みは外せません。

生産性を高める「OKRは」設定のコツ

多くの日本の大手企業では、いま述べたOKR=ゴール設定が本来的な目的からかけ離れて行われているように思います。 たとえば経理の仕事なら、「私たちは経理部のチームです。だから毎日ここに座ってエクスペンス・レポート(経費報告書)を整理しましょう」といったプロセスやタスクをゴールに設定しているのではないでしょうか。
OKRは、いまやっている仕事のプロセスを守るためにあるわけではありません。 経理チームのゴール設定なら、本来的にはこんなふうになってもおかしくないでしょう。
「エクスペンス・レポートって、面倒くさいよね。だから書くんじゃなくて、システム上で整理したほうがいいと思う」 「いいね。じゃあ、今期のうちのチームのOKRは、エクスペンス・レポートを整理する仕事をなくしていくということにしよう」
つまり OKRは、会社の利益のために何を達成するかという大きなゴールから逆算して考えるべき だということ――。

グーグルには、「いまの 10 倍の成果が出るように考えよう」という「 10 X」と呼ばれるカルチャーがあるので、プロセスやタスクの効率をほんの少し向上させるようなOKRを掲げる社員はいませんでした。

「だれが何を達成したか」をみんなでシェアする

グーグルには、だれが何を達成したかをみんなでシェアするためのツール、仕組みがいろいろありました。

たとえば 「スニペッツ(Snippets)」。毎週金曜までに個人個人がその週に達成したことや来週することのスニペット(Snippet、情報・ニュースなどの抜粋)を所属チームのマネジャーのドキュメント・フォルダに入れます。マネジャーはそれにチームとしてのスニペットをつけて、上司のドキュメント・フォルダに入れます。上司はさらに上のレベルへ。最終的にトップの秘書が編集して、世界中の全社員に「スニペッツ」としてシェアするという仕組みです。
スニペッツは、みんな本当によく読んでいました。 チームや自分の仕事ぶりをグローバルにアピールできるのですから、社員のモチベーションを高める効果もある わけです。

だから、「さっきスニペッツで見たんだけど、面白そうなプロジェクトをやり始めたね。 20%ルールを使って協力したいから、詳しく教えてくれない?」といったやり取りが、いつもグローバルに行われています。 スニペッツのおかげで、かっこいいチームの周りにフォロワー(追随者)が自然に増えていく わけです。

チーム単位で評価されるというのは、プロジェクト・オキシジェン以来、グーグルの「文化」になっていると言えるでしょう。だからスニペッツのような仕組みもあるし、チームの中で仕事をサボって怠けているようなメンバーは、他のメンバーからすぐフィードバックされて、マネジャーにも報告されます。

グーグルというと、まったくの個人主義で放任主義というイメージがあるかもしれませんが、じつはかなり集団主義的なのです。 そしていい意味で、グーグルの社員は自分の人生を会社の中に持ち込んでいます。だから心理的安全性をベースにしたフランクな対話を求めるし、達成感を得ている仕事内容をシェアするし、ほかの人とのコラボレーションを欲するわけです。

グーグルではポリティカル(政治的)な人はすごく嫌われます。たとえば、スニペットを大げさに書いたり、ほかの人のスニペットをけなしたり――。そういう人が 20%ルールを使おうとしてもプロジェクトに参加させてもらえません。

同僚にお礼ができる「ピアボーナス」

グーグルで印象的だった仕組みの一つに「ピアボーナス」があります。 これは 同僚(Peer)にボーナスをあげられるという制度 で、社員1人ひとりに1万5千円の決裁権が与えられていて、この人にあげたいというときには、いつでもシステムに相手の名前とその理由を入力できるというもの。一応、マネジャーが承認しなければいけないのですが、3日間で自動承認されてボーナスが支払われるという仕組みになっていました。

当然ながら、特定の人に何度も払うといったことが起きないように、1年間で払える人数や回数は決められています。
マネジャーの承認が必要というのにも意味があって、マネジャーがピアボーナスの申請メールを見て、「頑張ってくれたんだね、ありがとう」と、メンバーを褒めることができるからです。みんな、マネジャーに自分の頑張りを認めてほしいのです。

ちなみに、メルカリでもピアボーナスの仕組みを取り入れているそう

個人評価をなくし、プロジェクトを評価する

チーム単位での行動を直接的に促す仕組みとしては、「ペア制度」 があり、これもおすすめです。 フラットな組織管理体制の構築を目指す 「ホラクラシー(Holacracy)」の考え方の一つで、プロジェクトには必ず2人(ペア)で責任を持つようにして、個人評価をなくします。 評価は、個人単位ではなく、プロジェクト単位で行うのです。当然、この場合のOKRは、2人で納得できるものを考えなくてはならず、同じ目標を追いかけることになります。

「報・連・相」はやりすぎぐらいでちょうどいい

グーグルでは「オーバーコミュニケーションが大切にされている」

アンダーコミュニケーションというのは「報(報告)・連(連絡)・相(相談)」が足りない状態、オーバーコミュニケーションというのは「報・連・相」をやり過ぎている状態のこと

その情報が自分に必要かどうかを自分で判断して自発的に動くということが求められている

要するに情報共有されるメールというのは、「これをやってください」というような、いわば仕事の依頼ではなくて、ほとんどが「これがあるので必要なら動いてください」というような、いわば報告なのです。

当然ながらチームのマネジャーにもオーバーコミュニケーションが求められます。「うちのチームは今週、これやりました」とか「今日あったすごくいい事例です」とか「Aさんは頑張ってくれました」といった報告を、みんなにいちいちシェアしておかないと、「あいつら、何もしていない」と思われてしまいかねないのです。
グーグルでは、それができないマネジャーはまったく評価されません。

グーグルには、「マネジャーはチームのエバンジェリスト(伝道者)でなければならない」という文化がある

なぜそのような文化が根付いたかと言えば、個人やチームのブランディングにかかわるからでしょう。 せっかくいい仕事をしていても、そのことがシェアされていないとだれにもわかりません。シェアされていれば、 20%ルールを使って「かっこいいね、自分も手伝いたい」という人がどんどん集まってきて、より大きなインパクトのアウトプットを生み出す可能性が出てきます。

つまり、ブランディングを妨げるシェアしかできないマネジャーには大きな成果が期待できないということ――。評価が下がって当然ですね。

ちなみに 20%ルールには、「いまと違う職場で自分のスキルを高めて、違う仕事もできるようにする」という、いわばトレーニングの機能もあります。 グーグルではみんなよく異動します。組織改編が多いので仕事内容も変わりやすく、次のチームに行くか、違う仕事をするかといった選択を迫られることがたびたびあるのです。その際は、もちろん自分で決めないといけません。
つまり、こうした組織改編にともなう選択の幅を広げることにも、 20%ルールは一役買っているわけです。

他のチームとの接点を増やせば、「思いがけない発見」も増える

グーグルでは、 セレンディピティ(思わぬものを偶然に発見すること) にかかわる仕組みも印象的でした。
簡単に言うと、グーグルという会社の文化とは「すごいことを自発的にやる」ということです。みんながいつも「すごいことって、なんだろう? どこにある?」と考えていて、探し求めています。

自分の仕事の領域や役割を超えた人たちとできるだけ接すること、つまりセレンディピティが重視されるわけです。 自分が所属する縦割りの範囲内や自分と同じレベルの人とつき合っていても「思いもよらない、すごいもの」を見つける可能性は、ほとんどゼロです からね。

Last Updated: 8/17/2021, 4:03:44 PM